このような方にお勧めの記事です
  • 膝が痛くて、運動していいのか迷っている方
  • 「軟骨がすり減っている」と言われて、動くのが怖くなった方
  • 膝をかばっているうちに、運動から遠ざかってしまった方

「膝が痛いんですが、運動していいんでしょうか」

これは、本当によくいただく相談です。

階段の下りがつらい。正座ができない。椅子から立ち上がるときに痛む。訴え方はさまざまですが、行き着く質問は同じです。

「病院で年のせいと言われた」「軟骨がすり減っていると言われた」。そう聞いて、運動をやめてしまう方もいます。

気持ちは分かります。痛いところを動かすのは、怖いですから。

ただ、「軟骨がすり減っている」ことと、「運動できない」ことは、別の話です。

そして動かさないことのほうが、状況を悪くすることもあります。

ひとつ、先にお断りしておきます。膝の痛みの原因はひとつではありません。半月板や靭帯の問題、関節リウマチ、痛風など、さまざまです。そのなかで中高年にとくに多いのが変形性膝関節症です。この記事は、その変形性膝関節症についてお話しします。

この記事の結論を先にお伝えします

  • 画像で見える変化と、痛みの強さは一致しないことがある
  • 変形性膝関節症のガイドラインでは、運動療法が強く推奨されている
  • ただし、動かす前に確認してほしい状態がある
  • 膝が不安な方は、膝以外に原因があることも多い

「膝の軟骨がすり減っている=運動できない」ではない

まず、いちばん多い誤解からお話しします。

レントゲンを撮って「軟骨がすり減っていますね」と言われて、「もう動かしてはいけない」と受け取ってしまう方がいます。私が相談を受けるなかでも、この受け取り方をされている方は少なくありません。

実際、膝に痛みがある方は、痛みのない方に比べて「自分にとって運動は危険だ」という思い込みを、自覚のないまま強く持っている傾向がある、という研究報告があります(南オーストラリア大学、2024年)。「すり減る」という言葉を文字どおりに受け取ってしまうことが背景にある、とも指摘されています。

ところが、そうとは限りません。

レントゲンで見える変化の程度と、本人が感じる痛みの強さは、一致しないことがあります。

骨の変化があっても痛みをまったく感じていない方は珍しくありません。逆に、画像上は軽くても痛みが強い方もいます。

ここは私の領分ではないので、ガイドラインに書かれていることをそのままお伝えします。変形性膝関節症の診断は、レントゲンがゴールドスタンダードとされていて、そこに痛みの出方などの臨床症状を合わせて行われることが多いそうです。

ただ、レントゲンの重症度をあらわすKellgren-Lawrence分類は、医師どうしで判定が一致しにくいこと、骨以外の状態は写らないことが、ガイドラインでも課題として挙げられています。レントゲンで異常がないとされた方にMRIをかけると、69%に軟骨の病変が見つかったという報告もあります。

変形性膝関節症では運動療法が推奨されている

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

日本整形外科学会の『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』には、こう書かれています。

運動療法は、鎮痛、身体機能改善効果、日常生活機能改善効果を認め有用である

ガイドラインの評価は、次のとおりです。

項目ガイドラインの評価
推奨の強さ1:強い(実施することを推奨する)
エビデンスの強さC:効果の推定値に対する確信は限定的である

ここは、正直にお伝えしておきたいところです。

「強く推奨する」と「エビデンスは限定的」が、同時に書かれています。

矛盾しているようですが、そうではありません。ガイドラインは、その理由もはっきり書いています。

エビデンスは限定的ではあるが、益と害とのバランスが確実であり、運動による健康増進効果も期待されることから、「運動療法を実施することを強く推奨する」と判定した

つまり、「どれくらい効くかがはっきり分かっているから勧めている」のではありません。「効果の大きさは限定的にしか分かっていない。それでも、害が少なく、得られるものが期待できるから、強く勧める」という判断です。

ここを「エビデンスがCなら意味がないのでは」と受け取らないでいただきたいのです。治療の推奨は、効果の確からしさだけでなく、益と害(メリットとデメリット)のバランスで決まります。

国際的な学会(OARSI、ACR、EULARなど)の主要なガイドラインでも、運動療法は同じように推奨されています。

そして、ガイドラインはこう続けています。

ただし、適切な運動を実施するためには画像評価を含む整形外科学的評価を行うことが重要である

運動を強く勧めているガイドライン自身が、「まず整形外科で診てもらうこと」を条件に置いています。これについては、あとの章で詳しくお伝えします。

※繰り返しになりますが、大事なことなのでもう一度お伝えします。このガイドラインは変形性膝関節症についてのものです。膝の痛みには他にもさまざまな原因があるので、すべての膝の痛みに当てはまるわけではありません。だからこそ、診断を受けることが前提になります。

膝が痛いときは、股関節・足首・体重も確認する

これは、指導していて強く感じることです。

股関節と足首が硬いと、膝の負担が増える

膝に不安を訴える方の体を見せていただくと、股関節や足首が硬いことが本当に多いです。

膝は、股関節と足首にはさまれた関節です。上下が動かないぶんのしわ寄せが、真ん中の膝に集まります。

ですので私は、膝が不安な方でも、股関節と足首の動きもあわせて見ます。膝そのものだけを見ていても、原因にたどり着かないことがあるからです。

歩行や階段では、膝に体重の2〜7倍の負担がかかる

もうひとつ、指導していて気づくことがあります。私が見てきた方のなかには、体重が増えた時期と、膝が痛み出した時期が重なっている方が多いのです。

膝にかかる負担を調べた研究では、こう報告されています。

動作膝にかかる負担
平地を歩く体重の約2〜3倍
階段の昇り降り体重の約4〜7倍

※数値は研究によって幅があります。特に階段は報告差が大きいので、目安としてご覧ください。

逆算すると、体重が1kg増えるだけで、歩くときの膝には2〜3kg分の負担が上乗せされることになります。

「階段の下りが特につらい」という声をよくいただくのも、これで説明がつきます。階段は、平地の倍以上の負担がかかる動作だからです。

階段がつらくなってきた方は、『前は平気だったのに…』階段がつらくなった人へもあわせてご覧ください。

膝が痛いとき、運動より先に受診したほうがいい場合

ここまで「動かしたほうがいい」と書いてきました。ただし、そのまま動かしていい状態かどうかは、自己判断できません。

私も、次のような症状がある場合は、受診をお勧めしています。

私が受診をお勧めしてきたのは、こういうときです

  • 膝が腫れている
  • 安静にしていても痛む
  • 急に痛くなった
  • 曲げ伸ばしができない

この4つに当てはまるときは、運動より先に、なるべく早く整形外科へ。ここは私の領分ではありません。

膝の痛みには、変形性膝関節症以外の原因もあります。何が起きているかを知らないまま動かすのは、いちばん危ないやり方です。

無理なく歩いて来られる状態であれば、来ていただいたうえで、その日は膝にまったく影響のない内容に切り替えることもあります。

「来たからには何かやりましょう」と、決めてかかることはしません。

膝が不安でも、角度・姿勢・深さを変えればできる運動がある

診断を受けたうえで、「動かして大丈夫」となった方に、私がしていることをお伝えします。

  • 股関節と足首の動きを先に見る
  • 痛みが出ない範囲を、一緒に確認しながら決める
  • 膝を曲げる角度は、痛みの出ない範囲にとどめる
  • 体重をかけない種目(座ったまま、寝たまま)から始める
  • スクワットをするなら、浅くして、様子を見ながら
  • その日の痛みの有無で、内容を変える

共通しているのは、「やるか、やらないか」の二択にしないということです。

膝が不安な方は、この二択で考えてしまいがちです。でも実際には、角度を変える、姿勢を変える、深さを変えるだけで、できることはかなり残っています。

「今日は痛むので、座ってできることにしましょう」。この判断ができるだけで、運動をやめずに済みます。

膝に不安がなく、下半身の衰えのほうが気になる方は、40代から疲れやすくなった人が”まず下半身”を鍛えたほうがいい理由もあわせてご覧ください。

膝が不安でも「運動を全部やめる」のは避けたい

最後に、これが本当にもったいないという話をします。

膝が不安な方を見ていると、2つのことが起きています。

膝が痛いと、痛くないほうの脚まで弱りやすい

痛むほうを動かさなくなるのは当然として、実際に見てみると、痛くないはずのもう一方の脚も弱っていることがよくあります。

片脚が痛むと、歩く量そのものが減ります。出かける回数も減ります。結果として、両脚とも落ちていきます。

膝が痛くても、上半身まで休ませる必要はない

そしてこれが、いちばん多いパターンです。

「膝が悪いから」という理由で、上半身の運動まで、まとめてやめてしまっている方が本当に多いんです。

膝が痛くても、背中や肩や腕は動かせます。座ったままできることも、寝たままできることもあります。

それなのに、膝を理由に全部が止まってしまう。膝の心配をしているうちに、体全体が落ちていきます。

ただし、一見すると上半身だけの種目でも、実際には下半身で踏ん張っていたり、その方の動きのクセで膝に負担がかかってしまうことがあります。ここは自己判断が難しいので、種目選びは専門家と一緒に決めるほうが安心です。

運動から遠ざかっていた方が何から始めるかについては、運動不足だけど何から始めればいいかわからない人へ|スクワットがおすすめな理由でお伝えしています。

まとめ

  • 画像で見える変化と、痛みの強さは一致しないことがある
  • 運動療法は、ガイドラインでもっとも高い推奨度
  • 腫れ・安静時の痛み・急な痛み・曲げ伸ばし不可は、なるべく早く整形外科へ
  • 膝が不安でも、角度や姿勢を変えればできることは残っている

膝が不安なとき、いちばん避けたいのは「全部やめる」という判断です。

診断を受けて、動かせる範囲を確かめて、その範囲で続ける。それだけで、数年後の体はかなり変わります。

膝が不安な方も、一度ご相談ください

「痛みはないけれど、そのうち痛くなりそうで怖い」

「どこまで動かしていいのか、自分では分からない」

そんな方は、一度ご相談ください。

まちの隠れ家ジム宿河原では、その日の状態を見ながら内容を決めています。受診が必要だと判断した場合は、そうお伝えします。

気になる方は、こちらから詳細をご覧ください。

https://machigym-syukugawara.com/