運動前の静的ストレッチはよくない?|やめなくていい理由と2つの目安
- 運動の前にストレッチをしている方
- 「運動前のストレッチは逆効果」と聞いて、迷っている方
- 運動の前と後で、何をすればいいのか分からない方
運動の前は、ラジオ体操のように動かしながら伸ばす。運動の後は、ゆっくり伸ばして、伸びを感じたところで止める。
私が学んだときのフィットネスの参考書には、そう書かれていました。(今の版がどうなっているかは分かりません。)ただ、私も長いあいだ、そのようにお伝えしてきました。同じように教わった方も、多いと思います。
前者を動的ストレッチ、後者を静的ストレッチと呼びます。
言い換えると、「運動の前に、伸ばして止めるのは逆効果」ということです。そう聞いたことのある方も、多いのではないでしょうか。
ところが、そうとも言い切れない結果が、出てきています。
それどころか、静的ストレッチを組み合わせた形が、いちばん良い結果だったという報告もあります。
この記事では、分かってきたことと、気をつけたい点をお伝えします。
この記事の結論を先にお伝えします
- 運動前の静的ストレッチは、逆効果とまでは言えなくなってきた
- 動的と組み合わせた形が、ジャンプではいちばん良かった
- 気をつけるのは「1か所を長く伸ばしすぎないこと」だけ
- ほとんどの方は、そこまで長く伸ばしていない
- 運動後のストレッチ「だけ」では、疲れの回復に足りなかった
「運動前は動的、運動後は静的」と教わってきた
まず、言葉を整理しておきます。この記事では、以降この呼び方で通します。
| 呼び方 | どんなものか |
|---|---|
| 動的ストレッチ (ダイナミックストレッチ) | 動かしながら伸ばす。ラジオ体操のようなイメージです。腕を回す、脚を振る、体をひねるなど |
| 静的ストレッチ (スタティックストレッチ) | ゆっくり伸ばして、伸びを感じたところで止める。前屈で止まる、開脚で止まるなど。多くの方が「ストレッチ」と聞いて思い浮かべるもの |
私が学んだときの参考書では、運動の前は動的、運動の後は静的とされていました。そして私も、長いあいだそうお伝えしてきました。スポーツクラブに勤めていた頃と今とでは、運動前にお伝えする内容が変わっています。
ではなぜ、運動前の静的ストレッチが避けられてきたのか。理由は1つです。
伸ばして止めたあとは、力が出にくくなるという報告があったからです。
これは、まったくの誤りではありません。ただ、その後に分かってきたことが、いくつかあります。
力が落ちるのは、長く伸ばしすぎたとき
2024年に、スポーツと健康の専門誌『Journal of Sport and Health Science』に発表された報告があります。これまでの研究を83件集めて、まとめ直したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| まとめた研究 | 83件 |
| 参加者 | 2,012人 |
| 比べた結果の数 | 400件以上 |
結果は、こうでした。
| 1か所を伸ばす時間 | 最大の筋力への影響 |
|---|---|
| 60秒未満 | ごくわずかに下がる(ほぼ影響なしと言える大きさ) |
| 60秒以上 | はっきり下がる |
つまり、下がることは下がるのですが、それは長く伸ばしたときの話でした。
ここで、ご自身のストレッチを思い出してみてください。1か所を1分以上、じっと伸ばし続けているでしょうか。
ほとんどの方は、そんなに伸ばしていません。
前屈をして20秒、30秒で起き上がるのであれば、この話に当てはまりません。

お客様でも、「30秒伸ばします」と言っておきながら、20秒弱で自分から「OK」と言ってやめる方が多いです笑
さらに、測るものによっても結果は違いました。
| 何を測ったか | 結果 |
|---|---|
| 最大の筋力 | 小さく下がった |
| ジャンプの高さ | むしろ小さく上がった |
| 走る速さ | 差は見つからなかった |
| 力の立ち上がりの速さ | 差は見つからなかった |
この報告をまとめた研究者たちは、結論をこう書いています。
静的ストレッチをウォームアップから除外すべきという、これまでの推奨は支持されない
「逆効果だからやめなさい」とは言えない。そういう内容です。
※添えておきます。この60秒という区切りは、研究の中で使われた線であって、公的な基準ではありません。著者自身が「公式なガイドラインはない」と書いています。「何秒がちょうどいいか」も分かっていません。分かっているのは、長く伸ばしすぎると下がるということだけです。また、集まった研究の質は高いとは言えず、参加者も18〜30歳が中心です。40代・50代のデータではありません。
伸ばしたあとに体を動かすと、低下は小さくなる
同じ報告に、もう1つ大事なことが書かれています。
低下がはっきり出ていたのは、伸ばした直後にいきなり全力を出させたときでした。研究では、そういう測り方をします。
一方で、ストレッチのあとに体を動かす手順が入っていた研究では、低下は小さくなっていました。
実際の場面を思い浮かべてください。ストレッチをして、そのまま何もせずにいきなり全力を出す。そういうことは、あまりないはずです。

研究で起きていたことと、ご自身の運動で起きることは、少し違うということですね。
難しいことではありません。その場で足踏みをする、腕を回す、軽い重さで1セットやってみる。それだけで足ります。
ここで「わざわざ体を動かすのは面倒だ」と思われたかもしれません。ただ、思い返してみてください。
ベンチプレスの1セット目から、自己ベストの重さを扱う方はいません。キャッチボールの1球目から、全力で投げる方もいません。
つまり多くの方は、意識しなくても、すでにやっています。
もし、着いてすぐ本番の重さから始めているようでしたら、そこだけ変えてみてください。
私の指導でも、方によっては、軽く体を動かすことから始めています。また、運動前に静的ストレッチを長く行うことは、していません。
※ただし、これは「長く伸ばしても、あとで動けば帳消しになる」という意味ではありません。3分伸ばした分の低下が完全に消える、とまでは確かめられていません。
動的ストレッチには、はっきりした後押しがある
ここまでは「静的ストレッチが下がるかどうか」の話でした。では、動的ストレッチはどうなのか。
2023年に、35件の研究をまとめてウォームアップの方法どうしを比べた報告があります。何もしなかった場合と比べた結果が、こちらです。
| ウォームアップ | ジャンプの高さ | 20〜30m走のタイム |
|---|---|---|
| 静的+動的 | +1.8cm | データが少ない |
| 動的 | +1.6cm | 0.08秒 速い |
| 静的 | 差は見つからなかった | 0.07秒 遅い |
動的ストレッチには、はっきりした後押しがあります。ジャンプも走る速さも、良くなっていました。
一方で静的ストレッチは、ジャンプについては何もしないのと変わらず、走る速さでは0.07秒遅くなっていました。
ここで、その0.07秒という数字を見てください。20mから30mを走ったときのタイム差です。
タイムを競っている方にとっては、無視できない差です。
20〜30mを走って0.07秒ですから、記録を狙う場面では意味を持ちます。そういう目的があるなら、運動前は動的ストレッチを選ぶ理由があります。
一方で、健康のために運動をしている方が、この0.07秒を気にする場面は多くないと思います。ご自身がどちらなのかで、選び方は変わります。
※動的ストレッチについては、合計7〜10分ほど行ったときにいちばん良い結果が出ていました。短すぎても長すぎても、効果は小さくなっています。なお、こちらの報告の参加者は14歳から30歳です。
静的ストレッチが役に立つ場面もある
ここまで「下がらない」「変わらない」という話が続きました。では、運動前に静的ストレッチをする意味はあるのか。
先ほどの表を、もう一度見てください。いちばん上にあるのは、静的と動的を組み合わせた形です。
ジャンプの高さでは、動的だけよりも良い結果が出ています。
つまり「静的をやめて動的にする」ではなく、「静的のあとに動的を入れる」という選び方があります。すでに運動前のストレッチが習慣になっている方なら、そのあとに体を動かす時間を足すだけです。
※ただし、この組み合わせを調べた研究は数が少なく、走る速さについてはデータが足りていません。
もう1つ、現場で感じていることをお伝えします。
体が硬いと感じている日に、いきなり動かし始めるより、先にじっくり伸ばしてからのほうが動きやすい。そう感じる方は、少なくありません。

その日の体に合わせて選べばいい、というのがいま私がお伝えしていることです。
私の指導でも、先に伸ばしてから、動かしながらのストレッチに移るという形をとる方がいます。ただ、それは「静的だと下がるから」ではなく、その方の体の状態に合わせてのことです。
運動後のストレッチだけでは、回復に足りなかった
ここまでは運動前の話でした。では、運動の後はどうか。
2025年に、15件の研究・465人分をまとめた報告が出ています。運動後にストレッチをした人と、しなかった人を比べたものです。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| 筋肉痛 | 差は見つからなかった |
| 筋力の戻り | 差は見つからなかった |
| 次のパフォーマンス | 差は見つからなかった |
| 柔軟性 | 差は見つからなかった |
| 痛みの感じにくさ | 差は見つからなかった |
そして、ストレッチの種類でも、差は出ませんでした。伸ばして止めるものも、動かしながらのものも、いったん力を入れてから伸ばすやり方も、結果は同じでした。
ここで「では、運動後のストレッチは意味がないのか」と思われたかもしれません。
ここが、この章でいちばんお伝えしたいところです。
この報告が調べたのは、「疲労の回復を、ストレッチだけに任せたらどうなるか」です。
ストレッチ「だけ」では足りなかった、という結果です。
研究者たち自身も、安全で手軽な方法であり、他の手段と組み合わせる価値はあると書いています。やめたほうがいい、とは言っていません。
ここでいう「他の手段」として、論文の中で名前が挙がっているのはこちらです。
- 休養と栄養
- 軽い有酸素運動
- 冷却
- マッサージ
ストレッチは、これらと並ぶうちの1つという位置づけです。
この研究が測れていないものがある
そしてもう1つ、研究者たちが自分で認めている限界があります。
主観的な回復感や心理的な準備といった、意味のある可能性のある経験は、報告のばらつきのため評価できなかった
「本人がどう感じたか」は、測れていないということです。
そしてここは、私が現場でいちばん多く聞いている部分でもあります。
「やった日とやらなかった日で、翌日以降の疲れの残り方が違う」
この声は、多くの方からいただきます。
研究の結果と食い違うようですが、そもそも研究が測っていない部分です。数字で確かめられていないことと、無意味であることは、同じではありません。無意味だと断じるには、まだ早いというのが私の考えです。
私の指導でも、運動後にストレッチの時間をとっている方がいます。
※こちらの報告も、参加者は20代から30代が中心です。また研究者自身が、結果の確実性は低いと評価しています。15件のうち、質が高いと判定されたものは3件でした。
なお、柔軟性そのものを上げたいという場合は、また別の話になります。そちらは筋トレで体が柔らかくなるって本当!?|ストレッチだけが方法ではないにまとめています。
まとめ
- 運動前の静的ストレッチは、逆効果とまでは言えなくなってきた
- 力が落ちるのは、1か所を長く伸ばしすぎたとき
- 伸ばしたあとに体を動かせば、低下は小さくなる
- 静的と動的を組み合わせた形が、ジャンプではいちばん良かった
- 運動後のストレッチ「だけ」では、疲れの回復に足りなかった
気をつけたいのは、1か所を長く伸ばしすぎないこと。それだけです。
そしてほとんどの方は、そこまで長く伸ばしていません。
ちなみに私自身も、時間があるときは運動前にストレッチをします。
「逆効果らしい」と聞いて、続けてきたことをやめてしまうのが、いちばんもったいないと思います。
運動前に何をすればいいか迷う方も、一度ご相談ください
「自分の場合、前に何をすればいいのか分かりません」
「時間が限られていて、ストレッチまで手が回りません」
そんな方は、一度ご相談ください。
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